――年に一度、七夕の日にだけ会うことを許す。
 それが天帝の定めた掟だった。



星降る夜に、君と



「はあ……」
 深いため息を漏らす少年。その顔は目前に広がる曇天の空と同じ色をしていた。
 浮かない顔をするのも無理はない。今宵は年に一度の大事な日なのだ。想いを寄せる相手との会瀬を許された、特別な日。
それなのに――と、少年は改めて周りに目をやった。見渡す限りの荒れ模様。せっかくの絶景も台無しだ。いつもは澄んだ光を放っている天の川も、今宵は見事なまでに濁りきっている。晴れていればさぞ美しい星たちが見られただろう。
「……まったく。毎年毎年、狙ったかのように……」
 毎年、この時期になると決まって天候が崩れるのだ。前日までは憎たらしい程の日照りであるにもかかわらず。もはや彼には天帝の嫌がらせとしか思えなかった。
「くそっ、今度あいつの鉤爪をへし折ってやる」
 忌々しげにそう呟くと、少年は再びため息を吐いた。
 今宵も雨。天の川は水かさを増して、とても通れそうにない。
「………………諦めるべき、か……」





 こうなったら一人寂しく晩酌でもしてやろうかと、半ば自棄になっていた少年は、ふと誰かに呼ばれたような気がして顔を上げた。
 目を閉じ、耳を澄ます。
 すると、微かにだがはっきりと聞こえてきた。間違いない。呼ばれている。
「………………ユーゴくん! 見ーつけたっ!」
「んなッ!?」


 突然、背後からの衝撃を受け、つんのめる少年。驚きと、軽い痛みで振り返った先にあったのは、先ほどから彼の脳内を占めていた少女の笑顔だった。
 まったく予期していなかった来訪に、一体どうやってここまで来たのだろうかと矢継ぎ早に疑問を投げかける。
「ど、どうしてここにいるんだ……!? 川は!? 渡ったのか!? 危ないだろう!」
「えっとね、困ってたら大きな魔獣さんが渡してくれたの。ちょっと滑りやすかったけど……」
「落ちたらどうするんだ!? しかも魔獣だって……それはそれで危険じゃないか……!」
「もう……、何もなかったんだからいいじゃない」
 次々と飛び出す彼の言葉に、少女は頬を膨らませながら答えた。そして再び喚き出そうとする少年を遮ると、「それにね……」と言葉を重ねる。
「どうしても会いたかったんだもん。だから、来ちゃった!」
「なっ……!」
 羨ましくなるほど真っ直ぐな言葉に、少年は思わず言葉を失う。彼女の無防備さ加減を注意しようとしていたのに、その眩しい笑顔を目にしただけでそれらすべてが飛んでいってしまった。
「まったく……君には敵わないな」
 そう言って、少年は彼女に微笑みかけた。


     end



 2011/07/07/THU
  ふと思い立って、七夕パロなユゴユニ。ぎりぎり七夕に間に合ったのは覚えてる。(笑)
  やったね、相方が挿絵を描いてくれたよー!ヾ(*´∀`*)ノ
 2011/07/08/FRI
  相方のSS見て思わず描きましたv やっぱりこの抱き付く場面が可愛いー!
  あとは ユーゴの敵わないな発言とか 鉤爪さんとか 色々素敵でしたwww